低身長とは?

 両親の身長が共に高い方だと、お子さまの身長が平均より少し低いだけでも低身長だと感じられるでしょうし、 逆にご両親の身長が低いと、お子さまの身長が少々低くてもあまり気にならないこともあるでしょう。
だから背が低いという感じだけでは一概に低身長というわけではありません。すなわち低身長とは科学的データにもとずいて 判定されなければなりません。(せめて男の子は165cmの背丈がほしいと感じているのに、162cmしかないというのは低身長ではありません)
低身長とされているのは身長SDスコアがマイナス2.0SD以下の場合をいいます。SDとは標準偏差(Standard Deviation)のことです。これを正規分布といい、SDは統計的に算出された平均からの幅を示します。+2.0SDから-2.0SDの間に95.5%の子どもが入り、-2.0SDというのは、同性・同年齢の子どもが100人いたら低い方から2〜3番目までの子どもが含まれるます。具体的な身長は各製薬会社サイト「低身長の目安」等に示されており、低身長なら専門医を受診されることをお勧めします。
しかし、低身長は必ずしも病気ではなく体質的な場合がほとんどです。

 小さいと感じたら、今までの成長の記録を成長曲線に書いてみてください。
*成長曲線については、ファイザー株式会社サイトJCRファーマ株式会社サイト日本イーライ リリー(株)サイトノボ ノルディスク ファーマ株式会社サイトからダウンロードができますのでご利用ください。
 

■ 低身長の原因円グラフ
さて、お子様が低身長の可能性があると判断されたら、その原因を考えなければなりません。内臓や手足、躯幹、知能に異常がなく、背が低い以外何の異常もなく、元気で活発なお子様である場合はその原因は円グラフの分布になります。
この中で実際に治療が可能なのは、下垂体性小人症(成長ホルモン分泌不全性低身長症)とターナー症候群、骨軟骨異栄養症、プラダーウィリー症候群、慢性腎不全、SGA性低身長症のみで、これらを「治療が可能な低身長症」といいます。上記2つの場合は成長ホルモンによる治療が有効ですし専門医で診断されれば費用もほとんど無料となります。
上記2症状以外の場合(家族性小人症など)は残念ながら成長ホルモンによる治療は無効といわれていますので、治療の方法がありません。
 

■ 低身長の診察
低身長の原因を診断するわけですから、なるべく専門医療機関で行うべきです。専門医療機関はなにも大病院とはかぎりません。低身長を診断し治療する専門の診療所も全国にたくさんあり、かえって大病院よりきめ細かで、個々の患者さんの都合や悩みにていねいに応えてくれます。

1. 専門医療機関での検査について
外来では一般的な検査と身体測定を行います。
「治療が可能な低身長症」の疑いを持たれた場合は、専門医療機関で問診や診察、検査を受ける必要があります。外来の時点では採血、採尿をして一般検査や予備検査(スクリーニング検査)を行います。この他、手のレントゲン写真を撮り、骨年齢を計測したり、女子では染色体の検査なども行われることがあります。
問診では、本人の病歴や食生活などのほか、これまでの成長記録、家族歴などについて詳しく聞かれますので診察を受ける際は母子健康手帳や幼稚園・学校の健康手帳などの成長の記録を持っていくとよいでしょう。

2. 成長ホルモンの分泌刺激試験を行います
これまでの検査で成長ホルモンの分泌異常が疑われる場合は、成長ホルモンの分泌を促す薬剤を投与して、血液中の成長ホルモン濃度が上昇するかどうかを検査する必要があります。
成長ホルモンは常に一定の濃度で分泌しているのではなく、時間の経過ごとに血液中の濃度が異なります。このため1回のみの検査では信頼性が低いため、薬剤を投与してその前とその後30分ごとに2〜3時間継続して採血を行う必要があります。これを負荷試験といいます。体質によっては、ある程度の薬剤の刺激に全く反応しないこともあるため、少なくとも2つ以上の負荷試験を行います。複数の試験結果に矛盾が生じた場合や、成長ホルモン分泌不全による低身長症の疑いが強い場合はさらにくわしい検査を行います。
この検査は外来でも行うことができますが、入院して上記の検査と一緒に行うこともあります。